長谷川等伯展に行って来ました

上野国立博物館で、開催中の長谷川等伯展を見てきました。今年が没後400年という節目の年なので、それに因んでの開催です。
それにしても・・・今回は開催期間が非常に短くて・・・行けるかどうか不安だったのですが、見ることが出来たので良かったです。
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等伯は若い頃は仏画などを多く残していますが、後に京都に出て水墨画を多く手がけるようになりました。

まるっきり画風も違うのに、狩野派が、その彼の才能を恐れるほど水墨画は素晴しいものでした。いや、素晴しいという言葉では物足りないくらいです。

墨の濃淡で彼は、空気までを描いてしまうことの出来る人間なのです。
そして、水墨画では、余白もとても重要なウエイトを占めますが、等伯の場合は、余白が余白ではないのです。そこには、ちゃんとした肌で感じられるほどの空間が存在するのです。


一番最後の展示物である、国立博物館蔵の「松林図」は見ていて鳥肌が立つようでした。
霧の中に浮かぶ松林。湿り気のある冷たい空気が濃淡を生み出す霧の世界。墨の濃淡と、その先に繋がる余白の部分がそのなんとも言えない神秘的なまでの空間を生み出しているのです。
先日見てきた霧の中の樹氷が思わず脳裏を横切りました。

会場内はざわついているのに、見ている私の頭の中には、全ての音を飲み込んでしまう白い霧の世界を感じていました。

西洋画は、光と闇を描くことは出来ます(ルーベンスのように)。でも、その絵の世界に漂う空気の存在までは描くことは出来ないと思います。これは日本画、特に墨絵ならではの、そして等伯だからこそ存在しうるものなのです。そして等伯の生み出す空気は眼で見て感じるだけではなく、肌でも感じられるほどのものでした。

迷いのない、筆を寝かしたり起こしたりの筆遣いと、様々な素材と太さの筆を使い分けることによって生じる効果。計算されつくしたものか、それとも天賦の才能のままのものか、いずれにせよ眼福なひと時を過ごしてきました。
by mydreams_andy | 2010-03-05 22:44 | 日本 | Comments(0)