「糊こぼし」と「開山良弁椿」 食べ比べ

2月3日から5日まで、奈良に行って来ました。

目的は節分の夜に、春日大社の全ての灯篭が灯される、万灯篭を見に行ったのです。さらに欲張りな私は、興福寺の豆まきを見て福豆を頂いてきました。
観光は、興福寺と東大寺を隅々まで、春日大社はメインの本殿のみですが、見て来ました。勿論、回りながら、ご朱印も頂いてきました。

そして、古都奈良には美味しいものや、銘品が沢山あります。滞在時間が短いうえ、一人旅ですので荷物には限度がある為、期間限定のものと、老舗の逸品だけ購入して来ました。

このタイトルの「糊こぼし」と「開山良弁椿」は、ともに生菓子です。日持ちがしない為、帰って来る日の朝に受け取るように、到着早々予約をしておいたものです。
どちらも、1月の終わりくらいから、東大寺の修二会(「しゅにえ)が終わるまでのお菓子です。


よく「お水取り」って聞きますけど、それは、修二会と言う行の中で行われる儀式の一つが、正しいのです。
修二会についての説明は、東大寺のこの説明をご覧くださいね(下線部をクリックすると別ウィンドウが開きます)。


今回食べ比べた生菓子は、この修二会に因んだものなのです。

東大寺二月堂の「修二会(お水取り)」は、毎年3月1日~14日まで本行が行われ、別火(下線部をクリックすると用語説明のページへ)の練行衆が2月23日の「花ごしらえ」の日に作った造花の椿(二月堂下にある開山堂の椿を模したもの)が二月堂本尊十一面観音に捧げて祭壇に飾られます。

ま~簡単に言いますと、この行に参加するお坊さんたちが、(自ら手作りの)造花を本尊に捧げて飾るものが、椿なのです。
で・・・この椿もそこいらの普通のものではなく・・・


行の行われる二月堂下にある開山堂の椿は、赤い花に白い斑点が入り、練行衆が造花を作るときに糊をこぼしたようだと「糊こぼし」、また開山の良弁僧正(ろうべんそうじょう、りょうべんとも言う)に因んで「良弁椿(ろうべんつばき)」と呼ばれ、「奈良三銘椿」の一つに数えられています。

上記のような謂れのある、凄い椿なのです。因みに、開山堂は普段は一般公開されていませんので、良弁椿も近くでは見られません。
開山(東大寺を開いた)良弁僧正については、東大寺巡りをしたときに、また触れますね。


さて・・・前置きがかなり長くなりましたが、この椿がモチーフとなった和菓子として有名なのです。

今回私が購入してきたのは、萬々堂通則さんの「糊こぼし」と、鶴屋徳満さんの「開山良弁椿」です。
どちらも、特徴は、造花と同じ赤と白の花びらです(上記、別火の説明のリンク先のところに写真あり)。中は黄味餡です。
「糊こぼし」と「開山良弁椿」 食べ比べ_f0033598_2137350.jpg






後ろから。
「糊こぼし」と「開山良弁椿」 食べ比べ_f0033598_21432340.jpg


半分に割ったもの
「糊こぼし」と「開山良弁椿」 食べ比べ_f0033598_21434371.jpg



色合いは、そのお店の特徴が出るので、違いがあります。
素材は、共通しているのが「手亡豆(白いんげんまめのこと)、砂糖、餅粉」ですが、「糊こぼし」が「鶏卵」となっているのに対して「開山良弁椿」は「卵黄」と黄色の食用色素が使われていて、他につくね芋(山芋)を使用しています。さらに「糊こぼし」は本紅を使用しています。

食感は「糊こぼし」の方がやや水分が多いねっとりって感じです。餅粉だけなので、ホントに糊みたいな味がします。(押し絵羽子板などを作る際に使うのもこの糊を使うと以前、名人の所へ習いに行っていた母が言っていました)

「開山良弁椿」は、山芋が繋ぎになっているので、ややしっかりした感じで、黄味餡は卵黄の味が強く感じます。(この黄味餡は、かつての本郷にあった「藤むら」の黄味しぐれに似ている感じですが、藤むらのより甘みが強め)
この食感の違いが、口の中にすーっと消えるか、残るか、かも?残ると言ってもしつこい感じは全くなく、ほど良い感じです。

甘みは「開山良弁椿」の方がやや強く感じましたが、どちらもお濃茶で頂くとほど良いと思います。

どちらも甲乙つけがたく、大変美味しく頂きました。


念願叶って、ようやくこのお菓子を頂く事が出来、幸せに感じました。同じ花でも、職人さんによって形が違うものですが、この良弁椿だけは、すでに造花と言う変えようのない見本と言うか、本来のものがありますので、見た目はほとんど同じ、あとはお店の特徴の味と食感で勝負というところなんでしょうね。

人間の味覚と言うものは、微妙な差があるため、好みが分かれるものです。この2店もそうですが、ここ以外のお店も、それぞれのご贔屓さんがいらっしゃると思います。
そのご贔屓に応えるべく、お店の味を守り抜いている職人さんに感謝して食べ比べレポを終わりにしたいと思います。
Commented by けん at 2017-02-07 21:59 x
しっかり椿の形のまま持ち帰られて本当に良かったですね。自分の場合、帰宅後箱を開けるとブログアップに耐えられないぐらいの粘土細工のような悲惨な状態でしたから(^_^;)
Commented by mydreams_andy at 2017-02-08 20:13
>けんさん
けんさんから「粘土細工のようになった」と聞かされた時は、すでに何回か斜めにしてしまった後で、もうダメかも?って半分諦めていましたよ(笑)残りの2個は花びらの部分が入れ物にくっついてしまってうまく剥がせなかったので、ダメでしたが、これが奇跡的に綺麗に残っていました。

来年のカレンダーも週末がらみなので、行こうかな?と思案中です。そしたら今度は違うお店のを探そうかと・・・。
by mydreams_andy | 2017-02-06 22:29 | Food & Drink | Comments(2)